昨今では、幹細胞培養上清液やエクソソームなどを利用した化粧品なども非常に多く販売されるようになりました。
医療機関においても幹細胞培養上清液を用いた、美容・整形領域の治療の他、疲労回復、糖尿病など様々な治療法として徐々に浸透・普及してきています。
一方で、数多くの幹細胞培養上清液が製造・販売されているため、医療機関においては、販売メーカー等の安全性、培養技術力、品質管理方法などを十分に確認のうえ、製品を選択し、治療を提供頂くことが重要です。
本記事においては、数ある幹細胞培養上清液のメーカーの中でも、厳選した7社の製造メーカーや販売会社を紹介しております。
製品の選び方も併せてご案内しておりますので、参考にして頂ければと思います。
幹細胞培養上清液を用いた治療の一例
幹細胞培養上清液を用いた治療は、美容系の治療のイメージが非常に強いが、以下の通り、全身の疾患の治療に及んでおり、今後、利用医療機関が多くなれば、更に臨床データが揃ってくるものと考えられます。
種別 | 対象疾患の例 |
---|---|
美容系 | 顔や手のお肌のアンチエイジング、薄毛治療等 |
運動器系 | 変形性関節症、じん帯損傷、肉離れ、腰椎症等 |
消化器系 | 頭痛、自律神経失調症、脳出血後遺症、脳梗塞後遺症 等 |
脳疾患系 | 肝機能不全、逆流性食道炎、腸炎、慢性胆のう炎等 |
神経系 | ALS、アルツハイマー病、パーキンソン病等 |
循環器系 | 心筋梗塞後遺症、突発性心房細動、高血圧、不整脈等 |
呼吸器系 | COPD、気管支拡張症、喘息等 |
代謝性系 | 糖尿病、高脂血症、腎臓病、痛風、慢性腎不全等 |
皮膚・免疫系 | アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、シェーグレン症候群、アレルギー体質等 |
その他 | 更年期障害、歯周病、勃起障害、コロナ感染症後遺症、健康増進等 |
幹細胞培養上清液の特徴
幹細胞培養上清液の主な特徴としては以下が挙げられます。
①非侵襲的、且つ負担が少ない
幹細胞培養上清液は細胞を含まないため、他者の幹細胞を培養して製造した上清液であっても、免疫拒絶の反応を起こさない低リスクの治療法と言えます。また、患者からの脂肪等の採取も不要なため、負担も少ないと言えます。
②再生医療申請や認可が不要
第一種~第三種の再生医療法に基づく申請や認可を得る必要がなく、特段の設備投資が不要なため、再生医療法に基づく幹細胞治療に比べて、初期コストはなく、上清液自体の購入費以外のコストはない。
③必要な時に治療がすぐ行える
幹細胞を用いた再生医療は、細胞を採取し培養するのに数週間の準備期間を要しますが、幹細胞培養上清は必要な時にすぐに治療がおこなうことが可能。
④6-12か月の長期保存が可能
必ずしも治療を受ける患者様本人の細胞を使用する必要がないため、幹細胞培養上清液を事前に入手して、保管しておくことが可能。フリーズドライ化した製品であれば1年間以上保存も可能。
⑤低コストで治療提供が可能
幹細胞培養上清液は、他者の培養工程により生産される副産物であるため、上述の再生医療法に基づく治療よりも、比較的安価な価格で医療機関は入手可能であるため、患者への提供価格も一般的には数万円~数十万円で提供が可能という利点があります。
幹細胞培養上清液の留意点
前述のような特徴があり利用しやすい製品、治療資材である一方、以下のような注意は必要です。
①製品の安全性
特に海外産の脂肪由来培養上清液では、採取されるヒトの人種や居住地域、感染症の有無が明確でない例も聞かれます。ドナーの感染症有無や安全性に関する諸条件がクリアな製品であることが重要です。
②施術後は献血ができない
幹細胞培養上清液による施術を受けた方は献血ができなくなります。
③患者の体調の管理
施術時の体調によっては、施術後に副作用が起こることも考えられるため、患者の体調をよく確認することが重要です。また、施術後に1週間ほど、患部の痛みや赤み、腫れなどが起こることがあります。
④投与対象外の患者
がんの治療中や妊娠中、それらの治療後間もない方、妊娠の可能性がある方は施術を受けることができません。
⑤研究用試薬であること
あくまで研究用試薬となりますので、患者への説明と同意に基づき、医師の判断による施術になります。
メーカーの選び方/チェックポイント
上述のことを踏まえて、医療機関において、幹細胞培養上清液の製品・メーカーを選定することは非常に重要です。
そのためには、最低でも以下のことを留意して選定頂くことをお勧め致します。
1.安全性・品質の高さ
他者の幹細胞から作られた培養上清液のため、ドナー選定やスクリーニング検査、安全性試験、品質管理などが徹底されているのか等の確認が何より重要です。
以下は通常実施されている安全検査の一例です。
- ドナースクリーニング
- ドナー血液検査
- ウイルス試験
- マイコプラズマ試験
- 無菌試験
- エンドトキシン試験
2.製造元
他者の幹細胞培養上清液を利用することに対して、少なからず治療される患者の方は気になる点かと思います。
日本国籍(日本産)、若いドナー(若い細胞)、国内生産(安全性)という点は安心材料の一つになろうかと思いますが、日本製ばかりを強調して、安全性や技術・品質が担保されていないのであれば、それも問題です。
外国人ドナーであっても、製造元がはっきりしており、安全性や技術、品質などが信頼できるメーカーであれば、商品の選択肢として考えても良いですし、メーカーによってはスペックシートのような品質証明書を発行してくれるところもあります。
3.取扱製品の違い
幹細胞培養上清液には、主に脂肪組織由来幹細胞、歯髄由来幹細胞、臍帯血由来幹細胞が利用されており、細胞の種類や培養の条件などによって、含有されるエクソソームやサイトカインの種類や量、比率なども異なります。
以下は簡単な説明となりますが、医療機関の治療用途により、利用される幹細胞の種別を確認しておくことも重要です。
①脂肪:脂肪組織中に含まれる体性幹細胞を利用した培養上清液
ヒト由来の脂肪組織から摂取した幹細胞を培養したもので、細胞や組織の再生を促進する効果が高いため皮膚や毛髪の治療に多く使用される他、最近では整形外科分野における関節や筋腱靱帯の治療などにも使用され始めています。
また、肝臓に働きかけるサイトカインを多く含むため、肝臓などの内臓障害の治療にも活用されています。
②歯髄:ヒトの歯の中心にある神経部分から採取した幹細胞の培養上清液
若年層から採取した歯髄細胞のほうが成長因子を含むため、上清液として使用する際には乳歯を使用することが一般的です。
③臍帯:乳児と母体をつなぐ臍帯から採取される幹細胞の培養上清液
成長因子に富んだ若い細胞が非常に多く含まれるため、他組織由来の培養上清液より、細胞の再生力や各組織・細胞間の調整に関して、期待される効果や含有するサイトカイン量は非常に多いと言われています。
4.治療の提供価格帯
再生医療法に基づく幹細胞を用いた細胞培養治療は、患者から脂肪等を切除し、それらを細胞培養施設で3-4週間かけて細胞を数千万~数億個に増殖させ、患者に投与するため、医療機関にかかる培養費(数十万~100万円以上)が非常に高く、患者への提供価格も100万~500万円など非常に高価な治療です。
一方で、幹細胞培養上清液は、他者の培養工程により生産される副産物であるため、上述の再生医療法に基づく治療よりも、低コストで医療機関は入手可能であるため、患者への提供価格も一般的には数万円~数十万円で提供が可能という利点があります。
但し、幹細胞培養上清液の中でも販売メーカー毎に価格の多寡はあります。
当然、品質や安全性を担保するためにメーカーは設備や安全性試験などに投資していることから、明らかに安価な製品については、安全性や品質が担保されているか注意が必要です。
以下、再生医療法に基づく幹細胞治療と、幹細胞培養上清液を用いた治療に関して、手続きや治療までにかかる費用などを目安(参考程度)として一覧にしております。
項目 | 再生医療法に基づく幹細胞治療 | 幹細胞培養 上清液の治療 |
---|---|---|
法規申請 | 必要 100~200万位 | 不要 |
初期投資 | 必要 50~150万位 | 不要 |
治療開始迄 | 3か月 (申請手続き) | 契約後数日 |
脂肪等採取 | 必要 (患者負担高) | 不要 |
投与迄期間 | 4-6週間程度 | 即日 |
保存期間 | 培養細胞到着 24~48h以内 | 6か月~1年間 |
培養委託費 | 40万~120万位 | ― |
資材購入費(上清液) | ― | 数千~数万円位/1バイアル |
治療費相場 | 100~500万位 | 数万~数十万位/1バイアル |
幹細胞培養上清液メーカーのご紹介
以下では、厳選した7社の製造メーカーや販売会社をご案内しております。
選定する場合は各医療機関・先生方の治療方針などを踏まえて、自院の責任にて選定を進めて頂ければと思います。
※掲載順は順不同で紹介
1.セルプロジャパン
設立 | 2019年4月1日 |
住所 | 所在・研究室:神奈川県藤沢市村岡東2-26-1 湘南アイパーク |
代表者 | 佐俣 文平 |
業務内容 | 再生医療関連事業 分析・加工受託事業 化粧品・原料事業 |
(培養上清液)取扱種類 | 脂肪、臍帯、羊膜 |
冷凍・FDの別 | 凍結品・フリーズドライ |
製造責任者 | アカデミア研究者、上級臨床培養士 |
2.PIA
設立 | 2011年6月 |
住所 | 東京都品川区大崎1-2-2 |
業務内容 | 医療機器製造販売業 コンタクトレンズの輸入販売 医療経営コンサルタント |
(培養上清液)取扱種類 | 脂肪 |
3.オーソベンタス㈱
設立 | 2022年11月 |
住所 | 東京都千代田区麹町2丁目2‐29 オーセンティック半蔵門4階 |
業務内容 | 人工関節、バイオロジクス、ペインマネジメント等 その他、運動器傷害関連の商品の取扱い 第一種医療機器製造販売業 高度管理医療機器等販売貸与業 |
(培養上清液)取扱種類 | 脂肪 |
4.㈱フコク
設立 | 1953年12月 |
住所 | 工場:群馬県邑楽郡邑楽町大字赤堀1508-2 |
業務内容 | バイオ、医療関連製品の製造販売 ゴム製品の製造販売 金属・合成樹脂製品の製造販売 セラミックス・医療用具の製造販売 |
(培養元の幹細胞の)取扱種類 | 脂肪、毛根 |
5.東京幹細胞培養センター
設立 | 2021年9月1日 |
住所 | 東京都品川区東五反田5-12-1 ROYAL FLATS 3F CPC:大阪再生医療センター |
業務内容 | 幹細胞上清液の製造及び販売 |
(培養元の幹細胞の)取扱種類 | 脂肪・歯髄 |
冷凍・FDの別 | 凍結品・フリーズドライ |
6.同仁がん免疫研究所
設立 | 2013年1月4日 |
住所 | 熊本県熊本市南区流通団地 1-44-2 |
業務内容 | ・細胞の培養・加工、および保管・管理 ・再生医療技術の提供 |
(培養上清液)取扱種類 | 歯髄 |
冷凍・FDの別 | 冷凍 |
7.Advalife Science
設立 | 2019年9月10日 |
住所 | 本 社 〒104-0061 東京都中央区銀座2-7-6 新銀二ビル6F CPC 〒222-0033 横浜市港北区新横浜2-3-12 新横浜 Square BLD.15F |
業務内容 | ・ヒト脂肪由来間葉系幹細胞培養上清液の製造、研究 ・細胞培養事業運営 / 医療機関の開設及び運営 ・各種医療データベースの構築、運用及び各種医療データの分析、研究、調査 |
(培養上清液)取扱種類 | 脂肪 |
導入に関するご相談はこちら
幹細胞培養上清液の導入をご検討の方、またメーカー選定などでお悩みの方、無料でご相談承ります。以下よりお問合せ下さい。
上清液と併せて、PRPフリーズドライ(申請不要、初期投資無し)を検討してみてはいかがでしょうか。
PRPフリーズドライは、上清液と併せて、再生医療関連メニューとして導入されるケースが多くなってきております。
以下、関連記事を参考頂けばと思います。
また、再生医療法に基づくPRP療法や幹細胞治療をご検討の方は、再生医療申請代行業者の紹介ページを参照下さい。